地方消滅・デトロイト市破綻からの復興

4月3日

文芸春秋4月号「地方消滅」対策はデトロイトに学べ 米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院・全米民主主義基金客員研究員牧野愛博(まきのよしひろ)

米中西部ミシガン州デトロイト市は2013年7月に連邦裁判所に破産を申告した。ピーク時には全米5位の人口185万を数えた街だったが、現在は当時の三分の一の約68万円になっている。まだ破産して1年数ケ月であるが、復興はすでに始まっている。ほとんどの人が破産して良かったと言う。

デトロイト復興の象徴とされる「クイッケローンズ社」は、2010年に本社をデトロイトのダウンタウン地区に移転し、関連会社とともに次々とビルを買収して新規ビジネスを展開している。若い芸術家や音楽家の卵たちが通う学校、ボーリング場とバーを合体させた新しいスタイルのレストランなど。

クッケローンズに続いて2012年に生産を始めたデトロイト独自のブランド「SHINOLAシャイノラ」

は腕時計、自転車、名刺入れなど現在の販売拠点はニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ロンドンにまであるようになった。

デトロイド市は「デトロイド・ダッシュボード(計器盤)」をホームページに設けている。「LED街灯の設置数」「不法投棄の除去トン数」「荒廃した住宅の除去数」等6つ。

デトロイト市が期待をかけているのが国内外からの投資だ。たとえばクイックローンズが入札で競り負け上海の不動産開発会社DDIグループがビルを落札している中国は脅威でなくて、良き競争相手、それが街の復興につながれば良いと言う。ちなみにデトロイト近郊のミシガン州立大学の7200人の留学生のうち、中国人留学生が4400人も占めているという。この数字は日本人留学生の数十倍。

*日本のトヨタ自動車は破産による美術品の流失を心配して、デトロイド美術館に百万ドルの寄付をしている

ここで日本は何を学ぶべきか。キーワードはヘンリー・フォードが海外の労働者を集めたことに象徴される「門戸解放」であり、今のデトロイドに生きる人々も海外投資を積極的に募っていると説く。

米国永住権を取得したある日本人は「日本の移民政策はあまりにも壁が高い」と嘆く。デトロイトに住む人々の視線は、外国人に対してとても寛容で友好的であるとも言う。最近の日本は、諸外国との緊張関係が目立ち「誇り高い日本」「素晴らしい日本人」という論調が好まれているように見える。

地元紙の記者は、デトロイトの得た最大の教訓は、トラブルを放置試案と言うことだと言う。デトロイトの破綻は、素晴らしい地域社会を作るという仕事よりも、次の選挙のことばかり考える米国政治家の欠点の典型例だと。

どこかの国のトップも毎日株価ボードを眺めているという。デトロイト破綻の”教訓”は遠い将来のことではないだろう。